私が病院に勤めていた時の話です。
わたくしにはとても大好きな患者様がいました。
Aさんという壮年の殿方様でとても穏やかで謙虚で優しい方でした。
Aさんには奥様と2人の娘様がいらっしゃいました。Aさんは時折わたくしに
「妻と娘に親や夫らしいことを碌に出来なかった」と寂しそうに呟くのです。
Aさんは難病の呼吸器系疾患で入院していました。完治する治療法はなく、悪化しないように抑えるだけでいつ急変するかわからないような…まるで綱渡り状態の生でした。
急変してしまったら治療は困難とされている病でした。
ある日、Aさんは突然急変しました。
集中治療室にて人工呼吸器を装着、数日意識不明のまま…なんとか頑張っていましたが…
やがて逝かれました。
その間、奥様と娘様が交互に看ていらっしゃいましたが最期の時は家族皆様で看取ることができました。
わたくしがたまたま最期の時に立ち会うことができ、家族の皆様と一緒にAさんの話をしながらお部屋の片付けをしていた時のことです。
奥様:「えっ?石川さんっ!(私です)これ見て下さい!」
そう叫ばれて驚いて振り返ると、奥様がご自分の携帯を見て何やら慌てているのです。
携帯を見せてもらうと…なんと奥様の携帯の着信履歴にはAさんの携帯からの着信が。
そして着信時間はまさにAさんが亡くなる直前でした。
Aさんの携帯はベッドの横にある棚の引き出しにしまっていて、Aさんは数日前から意識不明。ずっとご家族がいらっしゃったので引き出しを開けて電話をかけるという動作はできません。ましてや発信時間は臨終の直前。ご家族だけでなく、たくさんのメディカルスタッフがいた中でAさんが意識を回復させて棚の中の携帯を取り出した時点で大騒ぎです。
奥様:「きっと主人が最期の挨拶をしてくれたんだわ。ありがとうって…」
わたくしは奥様と泣きました。
そしてまたその数分後に
奥様:「えっ?どうして?なくなってる!」
なんと、奥様の携帯に確かに表示されていたAさんからの着信履歴が消えていました。
奥様:「携帯、閉じなければ良かったわ」
と泣きながら寂しそうに笑っていらっしゃいました。
わたくしも側で確かにAさんの着信履歴の表示があったこと、その後に消えていたこと。
その間奥様がご自身の携帯を触っていないことはこの目で見ていました。
家族の愛の絆、信頼の絆は…確かに存在すること、奇跡は起きること。
わたくしはAさんご家族から教えていただいたのです。そしてわたくしはもし、Aさんにもう一度会えるならこう伝えたいです。
「Aさんの愛はご家族に確かに届いていましたよ!自信持ってください!」と。
病院には数々の科学的に説明がつかないことがたくさん起こります。
Aさんは光側の体験でした。
ですが、反対に闇側も存在するのです。
生への執着、現世での不満や恨み、執念を残した者たちは、死後も現世に留まります。
時にその者たちは…生きる者への執着、嫉妬、逆恨みから無差別に死後の世界へと無理矢理引き摺り込もうとする輩が存在するのも事実なのです。
これは…そう、まるで同じ闇側のツインレイヤー達のように…。